Ｙ2へ・・ 

お前とは小学生の頃から見知っていたな・・でも、あまり仲がいいというわけではなかった・・たまに草野球とかやるくらいで、お前はどちらかというと頭がいいグループ、そして俺はダメグループに属していた感じだった・・

中学になると、ほとんどかかわり合いはなくなった・・俺は中学２年くらいから４５０人くらい同級生がいる学校で、下から５０番くらいだった成績が上から３０番くらいになって、県内随一の進学校へ当然にいくもんだと考え出した・・みていたのはそればかりで、正直お前の存在を忘れていたんだ・・

・・でも、そればかりの理由ではないが、技術家庭科の評定が２で、県内随一どころか、地区で３番目の学校にいくはめになった・・・当然腐った

・・学校なんかいきたくなかった・・願書提出も合格発表の確認もすべて親にやってもらった・・

同じ中学からくる顔ぶれをみても、正直、俺がいるような場所じゃないと思った・・

・・でもY２・・同じ学校にお前がいたんだ・・お前は明るく俺を学校に誘ってくれたよな・・お互い金がなかったから、毎日往復１５キロをチャリンコで３年間通った・・

ゲーセンにも学校帰りよくいったよな・・お前は凝り性で熱くなるヤツだから、のめりこんでたな・・ゲームでお前に叶うことはなかったよ・・お前相当金つっこんでたぜ、ありゃ（笑）

でも、お前は、ささくれだった俺のこころをなごませてくれたよ・・

俺はバイトで悪いこと覚えて落ちていくパターンにはまったけど、お前は最後までまじめだったな・・

もっとも、俺が「この”ガラム”ってタバコは疲れているとき吸うと疲れとれるんだよ～」と教えて、そのあとしばらくしてお前の家にいったとき、自分でたてたコーヒーを一緒に飲みながら「ヒラチャーン、このタバコ甘くて疲れとれるね～」といって、自分で買ったガラム吸ってたのは笑ったよ・・

・・お前は成績はあまりよくなかった（もっとも俺も言えないけど・・）・・でもあまり聞いた事がない大学へ推薦で決まって、嬉しそうに俺に語ったな・・

・・「ヒラチャン、あんまりいい大学じゃないけど、うちには浪人する金ないだろ。学費も雑誌配る奨学生に申し込むから、金いらないんだよ・・ハハハ、それに俺勉強きらいだからもう受験勉強するのやなんだよ」と。

・・わかってたよ・・親に負担かけたくなかったんだろ・・俺は自分のことばかりで、親なんか中学しかでてないから、俺の気持ちなんてわからねーだろ、くらいにしか考えてなかった・・やさしいヤツだよ、お前は・・

・・卒業以来久しぶりにお前に会ったのは俺が大学４年のとき、そしてお前はやはりきつい仕事がたたったのか、２回留年してまだ学生やってるときだったな・・渋谷のうす汚い場末の居酒屋だった・・

・・「ヒラチャン、俺サークルだけやりに学校いってるよ。今、バイクが楽しくて、今度限定解除目指しているんだ・・」

「Y2、お前実家帰ってんのか？・・」

「いや、全然帰ってないよ・・２回も留年してんだろ、俺。親にあわせる顔がねえんだよ・・でも、今毎日、楽しくてしかたないからいいんだよ、俺は・・」

・・いや、Y２よ、それはちがうよ、きちんと授業うけろよ、といいかけたがやめたんだ・・




・・それから少しして、お前が死んだと連絡があった・・




・・深夜の第一京浜で買ったばかりの大型バイクになれなかったのか、トラブルがあったらしく、ハザードをだしていたが、進行方向の真横に車体をおいて、しかもお前は後ろ向きに作業をしていたから、後続車からお前はみえにくく、お前も後続車に気づきづらかった・・そして大型トラックがお前とバイクにスピード落とさずつっこんだみたいだ・・

・・それからすぐにお前の実家に線香あげにいったよ・・俺はおふくろさんに先日あって話したことを伝えた・・線香あげたときは、一度もあいさつしたことがない、職人気質のおやじさんが会釈してくれた・・お前のおふくろさんは俺にこういったよ・・

「万年君は本当に立派だよね～、今度は、とある地方公共団体に就職が決まったんでしょう？うちのY２なんか、帰ってきやしなかった・・やっと帰ってきたと思ったらこんな姿で・・でも、大学のサークルの後輩達がきてくれて、学校で楽しくやってた様子聞いて、ああよかったと思ったのよ、全然様子が分からなかったから・・あのこは親に心配かけたくなかったんだね・・」

おふくろさんによかったらとっといてと言われて、お前が死ぬ直前の写真をもらったよ・・


Y２よ・・俺は今３歳の息子マンとカミサンと３人で元気に東京で暮らしているよ。３５年ローンで猫の額ほどの土地だが家も買ったんだ・・

いろいろとせわしない毎日だけど、社会保険労務士試験にこの夏再チャレンジするんだよ・・

ヒラチャンはそんなことしなくたって安定してるだろって？・・バカいうなよ、この年になるといろいろ事情があるんだよ、Y２（笑）・・

勉強きらいだったお前の分まで勉強して、８月２２日にすべてぶつけるから見ててくれよ・・

・・ん？お前には関係ないか・・確かにな（笑）

・・でもよ、長い歴史からみたら俺たちなんてほぼ同時期に生きて、死ぬんだよ、言ってみりゃ、ただの点だろ？そんなに大差ないよ・・

だったらやっぱり目標もって、それ目指して熱く、人間らしく生きたほうがいいじゃねえか・・なあ・・


・・そうか、わかってくれたみたいだな、Y２よ・・

・・バンダナまいて、買ったばかりの新しいバイクにまたがって、こっち向いてピースサイン出して笑ってやがるぜ・・



・・試験終わったら、お前にまた会いにいくからよ・・おう、ガラム忘れずに持ってくからよ（笑）・・