ROUND78 Mさんへ(14)〜葉桜の季節(とき)に〜
・・
・・それは東京大学にほど近い場所で、桜が舞っていた・・よく見るとMさんと二人で何度も行った東京ドームにほど近いところだった・・
・・ああ、あった、Mさんの名前が新しく彫ってある・・ここにMさん眠ってるのか・・オープン戦も終盤、いよいよシーズン開幕だ・・Mさん
、これからはいつでもジャイアンツ戦見放題じゃねーか・・もう何も憂いる必要はないよ、お父さんを看取って、Mさんはやり切って生き抜いたんだ・・だからもう好きなことだけやればいいんだ・・どうせ俺もそんなに間をおかずにそっちに行くことになるだろうから・・
・・あ、そうだ!Mさんが一番好きだった唐揚げ持ってきたよ、お茶もね・・俺にしては気が効くだろう、Mさん・・でもごめんよ、こんなことくらいしかできなくて・・今、思い出したよ、一緒に食べた『表裏』のラーメン美味かったなあ・・
Mさん、むせながら笑顔で美味しいと言ってたよね・・
・・
・・その時、風のせいかたくさんの桜の花びらが俺のまわりに落ちてきた・・「万年さん、色々ありがとう・・」とMさんがそう言ってくれたように感じた・・あのとき、自分の足でヒョコヒョコと満面の笑みを浮かべながら歩いてきたとき、俺は確かに「奇跡」という言葉が頭に浮かんだ・・そうか、そうだよ!Mさんは花となり、確かに咲いたんだ・・
・・Mさんの声を久しぶりに電話で聞いてからもう3年経ったのか・・
・・「Mさん、悪いけどペナントレースは譲れない、ヤクルトだよ・・うん、しょっちゅうは無理だけど、また来るよMさん」・・そう心の中でMさんに別れをつげた・・今度はまさしく自分自身がMさんと同じような思いをするなどとはつゆとも考えずに・・
・・「さて水道橋にいってラーメンでも食べて帰るかな」・・俺はわざと口に出してそう言い、まだ肌寒い中、背中を丸めて、雑踏へと向かって歩き始めた・・
(つづく)
Mさんへ
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