ROUND288 NAKANO16・・つかの間の喜びの中、広がる暗雲・・

2023/11/12 04:13

・・そのような中、中野に来てから知り合った方たちに大学合格のささやかな食事会を開いてもらった・・皆俺が大学に入るなど想像してなかったので、夜学か通教かと思っていた・・そこで昼間のＡ大学というと皆から遠いのに通えるのかと笑いながら言われた・・だけどそこには、本当に喜んでくれているというあたたかみを感じていたので、俺も一緒になって笑っていた・・俺は本当に嬉しかったんだ・・今となっては、中野では嫌な思いも散々したけど俺のことを祝ってくれた人たちのことは一生忘れない・・

・・その場には先輩のSさんも一緒にいた・・そしてSさんも最高の笑顔でつまらないギャグを連発していた・・

・・Sさんは実は留年していたから、卒業と就職でやはり大変そうだった・・考えてみたら先輩だって多分留年が決まって大変だった時に俺を暖かく迎えてくれて、たくさん笑える思い出作ってくれたんだ・・おちゃらけた人だけど・・俺にとって中野というのはあなたそのもののことだったのかもしれない・・

・・そして、Sさんはそのとき奇跡的に大学卒業勝ち取るとともになんと北海道の高校の教員採用試験に合格したんだ・・

・・俺とSさんは二人とも四月から別々に新たなステージへ歩みだすことになる・・

・・Sさんは最後に「僕は一年留年して、教員採用試験に合格して、文字通り『イチリュウ』の人間になって卒業します！なんちって」などとあまりウケないギャグを飛ばしながら照れ隠しのように歩いていった・・そしてほどなくしてSさんは北海道へと去っていったんだ・・

・・そして、中野はそんな人たちばかりではなかった・・俺は仕事と生活に手一杯で実は入学前から日常の歯車がおかしくなってきていることにそのころはまったく気がつく術もなかった・・

・・俺は大学に入る前にSさんの後輩に当たる学生とも知り合いになっていた・・そしてSさんからみんなの近くに住んだ方が何かと良いんじゃないかと言われ、あのお気に入りの２階角部屋と同じ24000円の家賃で引越しをした・・しかし、それは一階の北向きで風呂なし、トイレ共同で銭湯は少し離れたところにあった・・地域を絞るとそんなとこくらいしかなかった・・そこは何よりも日中、陽が入らないのが最悪だった・・

・・今なら日当たりが悪いことなど選ぶことはないがそのときはあまり選択の余地がなかった・・